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テレビや新聞で耳にする、政治や経済の言葉。
でも、皆さん、本当に意味わかっていますか?
今更聞けない用語、けれども知らぬは一生の恥。
おバカ編集部のおバカな質問を、浜田先生にお答え頂きます!

第8章

2008年平成20年)1月31日木曜日

アメリカ大統領選挙【あめりかだいとうりょうせんきょ】

▼おバカ編集部
2008年最初のおバカ編集部です!先生、今年もよろしくお願いいたします!さて、最近はアメリカの大統領選挙がもっぱら話題になっていて、早くも今年一番のニュースになりそうですね?

▼浜田先生
はい。今年もしっかりお勉強していきましょう。
アメリカの大統領選は、日本の総裁選と違って長期戦ですから、本選挙を迎える今年は、非常に盛り上がるでしょうね。大統領選は、4年に一度行われますが、その間、実に2年もの期間を設けて、事前運動、予備選挙、本選挙が行われます。今は、1月から予備選挙がスタートして世界中のメディアが注目しています。

日本の50倍もの広さのアメリカは、とにかく知名度がものをいう国ですから、立候補者は新聞や雑誌、ラジオなどメディアを最大限活用して、自分の主義主張をPRしています。最も効果的なのはTVコマーシャルで自分をアッピールすることですが、これが一番お金がかかります。

またアメリカの場合、有権者の家を一軒一軒ドアを叩いて、「わたしに清き一票を!」なんて言って回る戸別訪問が許されていますが、これはなかなか大変なことです。他にも、選挙に向けてさまざまなサービスやボランティア活動が展開されていて、莫大な人員や費用がかかっています。日本のような狭い国でも、選挙運動にかかる費用は最低でも5億と言われていますから、アメリカの大統領選挙では相当な体力や資金力がないと、勝ち残れません。そういった資金面でいうと、民主党のヒラリー・クリントン候補が100億もの資金を集め、これまで選挙運動をリードしてきました。

▼おバカ編集部
ヒラリー候補といえば、あのちょっとツンとした佇まいが気になりますが・・・。そもそも女性が出馬することに批判などはないのですか?

▼浜田先生
そうですねぇ。彼女は10歳の頃から、地元シカゴの政治について関心を持っていたそうです。しかし、当時は女性が政治の世界に入るのはありえないことだったので、まずは弁護士になって、後に州知事になるビル・クリントン氏と結婚し、自分の夫を大統領にしようと考えたのです。

実は私、ワシントンに住んでいた頃、当時アーカンソー州知事だったビル・クリントン氏が初めて大統領選に出馬するということで、研究を兼ねて選挙活動にずっと同行させてもらっていたことがあるのですよ。
当時は、1期目を終えたパパブッシュ大統領が91%もの支持率で、他の候補者は勝ち目ナシといった状況でしたから、クリントン氏も出馬をためらっていました。しかし、夫人のヒラリーさんが「負けてもいいから出なさい!」といって大プッシュしたのです。本当に驚くぐらいの猛烈プッシュでした。言わばヒラリー夫人のおかげでクリントン氏は当選することが出来たのです。夫人からすると、「私が背中を押して支えたから、彼が大統領になれた」という思いが強かったようです。
その後、任期中にクリントン氏の女性スキャンダルが次々と報じられて、胸中穏やかではなかったようですが、それでも彼女はそれを我慢してこらえていたのですね。夫が女性にモテることも、計算して武器にできると踏んでいたのでしょう。そんなことがあって、クリントン氏は今、恩返しするような形で、ヒラリー候補のマイナスイメージを一生懸命フォローしているわけです。
彼女にとって、大統領になることは幼い頃からの目標でしたから、ようやく来たチャンスを絶対に掴みたいはずです。

▼おバカ編集部
そうだったのですか!野心家なのですねぇ。

▼浜田先生
一方、もう一人の有力候補と言われているオバマ氏は、上院議員になってまだ1期目の途中で、若くて経験も浅い議員ですが、彼に対する期待感も非常に大きいものがあります。彼は、もともとハワイ生まれですが、家庭の事情でインドネシアに住んでいたことがあります。今、アメリカ人口の半分は黒人やヒスパニック、アジア系の人種で占められていますから、そういった人たちの支持を集められるでしょう。若くて勢いのある議員ですから、若い有権者からは圧倒的な人気を得ています。

しかし、当選するためには、一般有権者からの支持だけでなく、上院下院の現職議員からの支持も必要になります。
民主党の党大会の場合、2000票ほどをめぐる争いになるわけです。そのうち1500票ぐらいが各予備選挙や党員集会に振り当てられた票なのですが、残りの500票は「スーパーデリゲート」と言い、現職の国会議員が持つ特別な票です。ここでは、今のところヒラリー候補が過半数の票を獲得しています。ヒラリー候補は、8年間ファーストレディを務めて、側面的に大統領の仕事を支えていましたよね。自分自身も上院議員を2期経験していますから、知識も経験も豊富で、現職の連邦議員からの信頼が厚いと見られています。

▼おバカ編集部
それではすでに、勝負アリということですか?

▼浜田先生
いえいえ、オバマ候補にも望みがないわけではありません。
ここ10年の歴史をふり返ると、パパブッシュに始まり、次はクリントン大統領が2期、そして今はブッシュ大統領が2期目を務めていています。今回、もしヒラリー候補が大統領になれば、ブッシュとクリントンという2つのファミリーがアメリカの政治を牛耳っていくことになってしまいます。それはおかしいということで、新しい風をもたらすオバマ候補を支持する人が増えています。

▼おバカ編集部
いずれにしても、民主党が優勢ということですね。
共和党の力が出ない理由は何かあるのですか?

▼浜田先生
はい。今までのホワイトハウスは、民主党と共和党がおおむね交互に政権を握ってきました。日本の場合、政権交代は話題にしかすぎませんが、アメリカではごく自然に定着していることです。
本来なら、ホワイトハウスが共和党であれば議会は民主党というように役割が分かれ、ホワイトハウスの暴走を議会が防ぐ、というパターンでした。ところが今のブッシュ政権下では、ホワイトハウスも議会も両方共和党が担ってしまい、いわば、共和党が何でも思ったように出来ると言う状況が生まれてしまったのです。
しかも、長引くイラク戦争やサブプライム問題など、国民の不満が爆発していて、ブッシュ大統領の支持率がアメリカ史上最も低い状況です。そのため、「今度は絶対民主党に!」と期待する国民が多くなっています。

その期待通り、中間選挙では、ヒラリー候補の強力なサポートのおかげで60人近くの民主党議員が当選し、民主党に大勝をもたらしたのです。ヒラリー候補には、日本で言うところの小泉チルドレンのような人達がたくさんいて、徹底的にヒラリー候補をバックアップしています。

▼おバカ編集部
では、このまま、クリントン候補とオバマ候補の接戦が続きそうですね。
日本にとっては、どちらの候補者が当選した方が有益なのでしょうか?

▼浜田先生
私は、オバマ候補が大統領になった方が、日本にとっては良いと思います。ヒラリー候補は、長くアメリカの政治に関わってきていますが、今アメリカは、アジアの中でも日本より中国に期待を寄せていますからね。「これからは中国をどう手なずけるか」と考えすぎて、どうしても「中国重視、日本軽視」の傾向が見られます。

その点、オバマ候補はハワイ生まれのインドネシア育ちですから、アジアの文化を身近に受け入れてきました。彼は、日本製の車や電化製品のファンであることを公言しています。また、彼自身が黒人として差別を受けてきた経験があり、第二次大戦中、日系アメリカ人が迫害を受けてきた事と重ね合わせ、アメリカの失敗や弱点を建て直そうという気持ちが強いようです。

とはいえ、両候補とも、残念ながら日本に対する関心は低いままです。民主党は労働組合やマイノリティを支持基盤にしてきていますから、高い技術を持つ日本人は、かえってライバル視されています。ただ、車にしても家電にしても最近は中国製のものが増えており、アメリカの市場を守ろう、労働者を守ろうという空気が強くなると、日本より中国に関心が向きがちです。

▼おバカ編集部
そんなぁ~。他に誰か、日本に良い風をもたらしてくれる人はいないのですか!?

▼浜田先生
そうですねぇ(苦笑)。日本には、ヒラリー候補やオバマ候補、あとはエドワーズ候補の名前くらいしか伝わってきませんが、実は立候補者は30人近くいるのですよ。民主党や共和党だけではなく、特定の主義主張を掲げる少数政党もたくさんありますからね。

しかも、今回は特別な要素を抱えています。それは、女性初と黒人初の大統領候補が競い合っているということです。これは、今までに例のないことで、問題は、これをどれだけアメリカ人が受け入れるかでしょう。口では「女性でもいいじゃないか、黒人でもいいじゃないか」と言っていても、いざ選挙となった時に「やっぱり白人男性の方がいい」なんて意見が根強ければ、状況は一転、他の候補者にだってチャンスは生まれるわけです。

また、アメリカの選挙の方式にも特徴があって、予備選挙は一般投票ですが、党員集会は話し合いなのです。
州によって持てる票数が決まっていて、みんなで話し合って誰に何票を投じるかを決めていきます。しかし、州によって「勝者総取り方式」にする場合と、「比例割当方式」にしている場合があり、戦いは複雑化しているのです。

▼おバカ編集部
う~ん、ますます予想できないですねぇ。
でも、私はオバマ候補に頑張ってほしいです!若くて勢いがあるし、黒人差別は許しがたいことですから!

▼浜田先生
そうですね。でも、アメリカはいくら自由の国といっても、まだまだ黒人マイノリティに対する抵抗がありますからね。「奴隷だった連中が、われわれの国をまとめるなんて許さない」といって、危害を加えられたり、暗殺されてしまう恐れだってあります。
今までも、黒人のコーリン・パウエル元国務長官が大統領の有力候補と言われたこともありましたが、彼の奥さんが、「大統領選に出たら、夫が殺されてしまう!」と危惧して、出馬を辞退したことがあります。
かつては、白人のジョン・F・ケネディ大統領ですら、暗殺されてしまいましたから、大統領選はある意味、命がけなのですよ。
それこそアメリカは銃社会ですから、いつ何が飛んでくるか分かりません。たとえそうだとしても、命を張ってでも大統領選に出たいという人は多いのです。

日本では政治に対する不信感が強いけれど、アメリカの場合は、アメリカンドリームと称されるように、“世界のアメリカ”のトップにしか出来ないことがたくさんありますから。国内で一番尊敬され、力を持っている大統領という立場につくことは、やはり何にも変えがたい名誉なのです。

黒人差別を受けてきたオバマ候補が「何とか自分が大統領になって、もっと改革をしていきたい」と望んでいるように、大統領を目指す人たちは、大なり小なり、自分の抑えられない夢や思いに情熱を傾けているはずです。

これからの注目点は、2月5日のスーパーチューズデーです。この結果次第で、今後の流れが決まりますから。とはいえ、11月の本戦まで戦いはこれからどんどん白熱していくでしょう。


取材:皆川夕美

Profile 浜田 和幸(はまだ かずゆき)浜田 和幸先生
1953年鳥取県生まれ。東京外語大学中国科卒業後、米ジョージ・ワシントン大学大学院政治学博士課程修了。戦略国際問題研究所主任研究員等を経て帰国。現在、国際未来科学研究所代表。また国連大学アメリカ評議会ミレニアム未来研究委員、21世紀の成長企業を探る研究会座長などを歴任。
浜田先生へ質問!
あなたが疑問に思っていることをおバカ編集部が浜田先生に取材します。
※ご投稿頂いたご質問は、編集部で検討し取材させて頂きます。
知っツモ WORD
勝者総取方式
1票でも多く獲得した勝者が、その州に割り当てられた票数をすべて獲得する方式。「比例割当方式」は、得票率に応じて、その州に割り当てられた票数を振り分ける方式。
スーパーチューズデー
2月5日の予備選挙の集中日。ニューヨーク州やカリフォルニア州など22の州でこの日に行われる。首都のワシントンDCは2月9日に予備選挙が予定されている。
これまで学んだこと
[日本経済&世界情勢を学ぶⅡ]
第29回 「中国経済【ちゅうごくけいざい】」 第28回 「デフレⅡ【でふれ・Ⅱ】」
第27回 「日航再建問題【にっこうさいけんもんだい】」 第26回 「普天間基地移設問題【ふてんまきちいせつもんだい】」
第25回 「国債【こくさい】」 第24回 「政権交代【せいけんこうたい】」
第23回 「衆議院議員総選挙【しゅうぎいんぎいんそうせんきょ】」 第22回 「東京都議会議員選挙【とうきょうとぎかいぎいんせんきょ】」
第21回 「鳩山由紀夫【はとやまゆきお】」 第20回 「2016年夏季五輪招致【2016ねんかきごりんしょうち】」
第19回 「政治献金【せいじけんきん】」 第18回 「国家公務員制度改革【こっかこうむいんせいどかいかく】」
第17回 「ガザ地区【がざちく】」 第16回 「景気【けいき】」
第15回 「バラク・オバマ新大統領【ばらく・おばましんだいとうりょう】」 第14回 「金融危機【きんゆうきき】」
第13回 「福田康夫【ふくだやすお】」 第12回 「原油高騰【げんゆこうとう】」
第11回 「北海道洞爺湖サミット【ほっかいどうとうやこさみっと】」 第10回 「チベット問題【ちべっともんだい】」
第9回 「暫定税率【ざんていぜいりつ】」 第8回 「アメリカ大統領選挙【あめりかだいとうりょうせんきょ】」
第7回 「山田洋行【ヤマダヨウコウ】」 第6回 「小沢一郎【オザワイチロウ】」
第5回 「裁判員制度【サイバンインセイド】」 第4回 「内閣総理大臣 【ナイカクソウリダイジン】」
第3回 「FX【エフエックス】」 第2回 「日本年金機構 【ニホンネンキンキコウ】」
第1回 「北京オリンピック 【ペキンオリンピック】」


[日本経済&世界情勢を学ぶⅠ]
第22回 「10年後の日本」 第21回 「増税」
第20回 「企業買収」 第19回 「内閣改造」
第18回 「郵政民営化」 第17回 「アメリカ経済 2」
第16回 「アメリカ経済」 第15回 「上場」
第14回 「新貨幣」 第13回 「海外支援」
第12回 「1円企業」 第11回 「高速道路」
第10回 「株式」 第9回 「税金」
第8回 「りそな銀行」 第7回 「通貨」
第6回 「国連」 第5回 「デフレ」
第4回 「有事法案」 第3回 「年金」
第2回 「竹中 平蔵」 第1回 「ペイオフ」
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