もう一度、ライ麦畑でつかまえて
J.D.サリンジャーの訃報を聞いて、友だちが『ライ麦畑でつかまえて』を読み直し、「若い頃にはさほど何とも思わなかったのが感銘を受けましたよ、いい本ですからぜひ読んでください!」と熱心にすすめてくれました。
彼女曰く、作家であれ、アーティストであれ、他界したとたん、その人物にものすごく興味が湧くそうで。サリンジャー然り、その人の辿った人生を根掘り葉掘り調べ上げ、作品にふれて、破天荒な生きざまや偉人ぶりを知るのが、ライフワークなのだとか! ということはつまり、彼女の研究対象者は途切れることなく増え続けるということで……終わりなく続くすごい趣味なのです。
興味がある人物とは、できることならいつか会って、ステージでも講演でもなんでも、ナマで話しを聞いてみたい性分なので、亡くなって初めて興味を持つという感覚がなかったのですが。たしかにそれならば特に興味のなかった人物にも目が向くわけで、09年、その急逝をきっかけに大ヒットしたマイケル・ジャクソンの『THIS IS IT』のような、新たな発見があるにちがいないのです。
偉人の生涯には生き抜くヒントがある
さて、そのきかっけのひとつになるのが、生誕100周年といったアニバーサリー。この年のマーケットはまさにノリノリで、その人物に関する本が出そろうわ、TV番組や映画にもなって、回顧展が開かれもする。その人とお近づきになるのは、絶好のチャンスというわけです。
今ならば太宰治の生誕100年、1909年6月生まれなので2009年がちょうど100周年。『人間失格』、『ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ』『パンドラの匣』…と作品を原作にした映画化が続き、太宰治をあらためて検証する一年となりました。さらに松本清張も1909年12月生まれの、生誕100周年。映画『ゼロの焦点』はじめTVドラマ化も多々。
まさか太宰治と松本清張が同い年とは思いもよらず、正直そのことにも驚きましたが、こういう発見があるのも生誕100年のおもしろさでしょうか。早くに散った太宰と、遅咲きの清張が、こうして100年後に共に人々から慕われているというのはなんともフシギでおもしろいことです。きっとご本人たちも思いもよらなかったでしょう。
いずれにせよ、人の本質を描く作品は時代を経ても色あせず、今を生きる私たちの心をつかむチカラがあるということ。ファンとして改めて読み直すにも、有名だけど実はまだ読んでいないという人にとっても本当にいいきっかけです。
そして今年、2010年は黒澤明監督、2011年は岡本太郎が生誕100周年を迎えます。これまた同世代ということにちょっとびっくりしますが。意欲的に活躍されてきた二人の生涯を辿ることで、勇気がもらえることは確実です。
たくさんの名作を世に残し、あきらめず、自分らしく生きてきた、偉人たちの人生には学ぶことがたくさんあります。荒俣宏監修『アラマタ人物伝』(講談社)も、荒俣氏セレクトの知られざる偉人が紹介されていてなかなかおもしろいですよ。ぜひ気になる人物を根こそぎ掘り下げてみてください!
text & photo 宮下亜紀