八百屋さんの新しいカタチ
ひさしぶりにグッとくるお店と出合いました。7月1日オープンした芦屋の『ORGANIC VEGETABLE CA』。野菜を扱う、要は八百屋さんなんですが、ビジュアルはセレクトショップさながら、野菜を売ってるなんて想像もつきません! 作家ものの器のごとく野菜がディスプレイされ、音楽はバロック、店主の福原悟史さんもまた絵になる人で! 野菜をこんなに格好良く売る店ははじめて、がーんと打ちのめされました。
「僕自身、お店の内装や建築が好きなので、来てくださる方も楽しめる場所にしたくて。イギリスをイメージして、モダン×アンティークな落ち着きのある空間にしました」
なんだかカフェのコンセプトを聞いてるようですが…! 店主の福原さんは、学生時代に「農業がやってみたい」と思い立ち、まず販路を確保しようと、芦屋で野菜の移動販売からスタートしたのだそう。
「農業は土壌を肥やすところから、何年間かの長いスパンで取り組まなくてはならないんです。資金もまだなかったので、とにかく自分ができるところからやってみようと」いうのが発端だったとか、ちょっとユニークなアプローチです。
美味しくてもう後戻りできない…!?
店を構えた今も、毎朝、能勢や亀岡の農家に赴き、自分の納得したものだけ仕入れています。
「野菜はもちろん、空間、サービス、すべてにおいて自分の中で一番いいものを出したいんです。路上販売ではサービス面に物足りなさを感じていて。自分のイメージする上質なサービスは、ホテルのもの。理想に近づくためにもお店が必要だったんです」
スーパーとの大きな違いは冷蔵庫がないこと! 「移動販売でもそうだったから、冷蔵庫を入れるという発想自体なかった」んだとか。夏場でも棚の青菜はくたびれることなく、いきいきたくましくて、鮮度の良さと、自然農法で育った野菜の強さを感じます。
「メインで扱っている能勢の農家は、MOA自然農法の指導を受け、現在は鶏糞・もみがら・しきわらといった限定有機肥料だけを使い、土の力だけで作ることを目指しています。販売を始めた頃は、正直、取り組む農法をたよりに農家を当たってましたが、今は味の差をはっきり感じます。焼いただけ、茹でただけで、ホントにおいしいですから」
というわけで、いよいよお買物。この日の仕入れからおすすめしてもらったのは天田茄子ととうもろこし。 「天田茄子は焼くと柔らかくて、すごく甘みがあるんです。とうもろこしはシンプルな塩ゆでで十分、生でかじっても甘いですから」と。そそられる言葉じゃありませんか!? こういう会話こそ、実は醍醐味かも!
「いわば、昔の八百屋さんの、現代風アレンジなんです。八百屋さんは特別なものじゃなく、日々の中に自然とあるもの。対面式で交わす日常的な会話が、楽しい日課の一つになれば嬉しい。自分の目で見て、店の人から作り手のこだわりやおいしい食べ方を聞いて選ぶ。コンビニやネットショッピングでは叶わない、付加価値ができればいいなって思います」
そう、店の人とあれこれ話してお気に入りを買って帰る、あの高揚感は特別です。そして、その日の晩ごはん、食いしん坊の私は至福の喜びを感じました! とうもろこしはかじればかじるほど甘さが濃くなって最後までノンストップ! 茄子に至っては…あのふくよかな食感としたたる甘みがいまだ忘れられません!
焼いただけ、茹でるだけで、立派な一品となる。激安戦線にあるスーパーと比べれば、値段は若干するけれど、自然農法のおいしさ、ここで買う楽しさを知ってしまうと、後戻りできないかも…! 料理は毎日のこと、いいお付き合いが出来るこんなお店、少しずつでもご近所に増やしていけたら幸せです。
text & photo 宮下亜紀