真っ白な雪景色に囲まれて
やわらかな温泉にとろける幸せ
冬の温泉の醍醐味といえば、やっぱり雪見の露天風呂が思い浮かびます。雪がいっぱい降る場所なのに、露天風呂、しかもできることなら、それが自然に囲まれた場所にあってほしいなんて、実はけっこう贅沢な望みなんです。なぜなら、雪がいっぱいの場所はとても寒いわけで、必然的に内湯が多くなります。で、露天風呂があるといっても、内湯に隣接して行けるようになっている場合がほとんどですから、片側は自然を感じられても、もう一方は建物とくっついているわけで、つまり、360度雪景色というのはなかなか難しいわけです。さらに、雪がいっぱいの野外ということは、つまりほとんど氷点下、そこでお風呂に入ろうというのですから、まずは過酷な自然環境の中だという覚悟が必要です。
それでも、やっぱり、自然に囲まれて雪見の露天風呂に入るというのは冬の旅の憧れで、過酷な寒さもなんのその、感動すること間違いなし!ということで、今回ぜひともご紹介したい温泉があります。乳頭温泉郷の奥まった場所にある「蟹場温泉」は、ちょっと穴場の存在です。入口では蟹がお出迎え、このあたりの沢に蟹がたくさん住んでいるというのが蟹場温泉の由来です。ここに目指す露天風呂「唐子の湯」があります。
まずは、浴衣の上に温かいガウンをはおり、宿の長靴に履きかえて、いざ出発。森の小道を50mほど歩きます。「えっ?!雪の中を歩くの?」って思いますよね。でも、この森の小道がいいんです。「寒い、寒い」といいながら、さくさくと雪を踏みしめて、白い息を吐いて露天風呂に向かう・・・。このプロセスが“ザ・冬の温泉”なのです。そして、雪景色の中に湯けむりを見つけると、誰しもが「すてき」とつぶやいてしまうのです。
さらに「寒い、寒い」といいながら、かけ湯をして温泉へ着水。「はぁ~、あったかい」こんなことで、人はこんなにも幸せを感じることかと笑ってしまうほどです。露天風呂は混浴ですが、脱衣所は別々、なんとなく男女暗黙の境界線があってすっと入れる作りです。ふんわりと包み込んでくれるようなやわらかな感触、お肌にも体にも心にもじんわりとお湯の温かさがしみこんで、とろけてしまいそうです。蟹場温泉は2種類の源泉があり、露天風呂の温泉は重曹を含むお肌スベスベ系、細かな湯の花がきらきらと輝く透明なお湯です。湯加減も絶妙。キンと冷えた空気と真っ白な世界が360度、雪の森の中にぽつんと座って温泉に入る。こんな極上の時間が、すくすくと美肌を育ててくれるのですね。
さらに、宿の中にはわたしの大好きな内湯「木風呂」があります。こちらは硫黄を含み、大きな湯の花がふわりふわりと舞う弱アルカリ性の癒し湯です。秘湯気分を満喫できる温泉ですが、モダンに改装されたお部屋もあって2人旅や女性旅にもおすすめ。忙しくてくたびれた時、わたしは、ほわっと脱力できるこの温泉が恋しくなります。心に響く冬の温泉へ、みなさんもぜひ。
クラランス、エスティ・ローダーグループなど、外資系化粧品会社や海外ブランドのマーケティング・広報・宣伝に携わり、15年以上の経験を持つ。OL生活のかたわら「温泉ソムリエ」「温泉入浴指導員」(厚生労働省認定)を取得し温泉を研究。その後、温泉とともに生きる決意をして独立。長年にわたる美容と旅の経験を生かし「温泉ビューティ研究家」として活動。著書「温泉ビューティ」、「だから行きたくなる 温泉セラピーの宿」(集英社)につづき、2009年10月に「癒されてきれいになる おひとりさま温泉」(朝日新聞出版)が発売。