――映画見せていただいたんですけど、最初のロードバイクで走るシーンカッコよかったですね。すごく気持ち良さそうで。
「気持ち良かったですね。右側に海が見えるんですけどすごく綺麗で。あんなまっすぐで人のいない道は東京にはないですからね」
――沖縄は初めて?
「初めてです。思ったより寒かったけど。天気悪くて、雨降ってたからかな。でも、海はすごく綺麗だったな。場所は名護です。上のほう。」
――この映画は尾びれを失ったイルカに人口尾びれを付ける試みをした、沖縄美ら海水族館の植田啓一さんという獣医の実話が基になっていますが、映画ご覧になっていかがでした?
「あった事実を大げさにして泣かそうとする意図が見えなかったから、僕はすごく好きですね。変にデフォルメされてないとこが良かったです。」
――そうですね。淡々としてましたね。松山さんは、この獣医の植田さん(役名は植村一也)の役だったわけですが、新米医師の苦悩と青臭さがよく出ていたと思います。彼を演じるポイントはなんだと思いました?
「あんまり考えてないんですよね。クセもつけるつもりなかったですし。役柄的に新人だから、すぐ周りが見えなくなるところと、勢いがあるところは必要かなと。彼は大人と子供の境い目で、ある意味大人ってどんなことがあっても相手に心配かけさせないことができるわけじゃないですか。それを彼は必死にしようとしてる。たぶん子供が大人に変わっていく時期だったと思うんです。そういうところが必要だと思ってやってたんですけど。」
――あんまり役作りって考えないんですか?
「役によって様々ですね。今回はあまり考えなかった。エルの時はいろいろ考えて作りましたけど。「蒼き狼~」の時も考えなかった。完璧に作っちゃう役とか、相手によって左右される役もありますから。」
――相手によって左右される? 今回イルカには左右されなかったんですか?
「今回考えてない分、共演の人の芝居にもろ影響されたのはありましたね。自然であればあるほどそうなるんですけど。一也(役名)がムカついてるとこは僕自身もすごくムカついてるし、けっこうリンクしてるとこありました。イルカには左右されませんでしたね。」
 | 自分を変えるきっかけを作ってくれたフジ |
――イルカのフジとは仲良くなれました?
「最終的には仲良くなれました。最初は距離感がよくつかめないまま全然分かんなかったんですけど。えっイルカの手触り?ゴムみたいな感じです」
――距離感がつかめない?
「今まで動物と触れ合ってきたことがなかったんで、根本的に最初にどう動物と接していいか分かんなかったんですよ。まだスタート地点にも立ってないんです。獣医の役なのに動物への接し方が分かってなかった。それが沖縄に来て初めてフジを目の当たりにして焦ったんですけど。」
――猫とか犬とか飼ってなかったんですか?
「猫とか犬も飼ってなかったです。動物好きじゃないですね。この映画をきっかけに好きになりましたし、どんどん自分から積極的に触れるようになりましたけど。前までは全然興味なくて、ほとんど動物って触ったことなかったんですよ。」
――へーっ。青森出身でしたよね? 青森ってキツネとかタヌキとかいそうですけど・・・。
「田舎の方はいますよ。キツネとかカモシカとか」
――へっカモシカ・・・。じゃあ、撮影中フジに助けられたなんてことはありましたか?
「撮影中ってすごいストレス溜まってくるんですけど、それを発散させてくれたのがフジだし、そう思ったらどんどんフジと一緒にいるようになったし、仲良くなりましたね。見てるだけでなんかカワイくて、笑顔になってる自分がいたんですよね。」
――確かイルカも笑いますよね?
「さあ、それは分かりません。実際何考えてんのか分かんないですけど、もしかしたら「なんでおめえ、何時までも目の前にいるんだよ、うっとうしいな」って思ってるかもしれない。でも、こっちからしたらそういうの分かんないから「カワイイな」と思ってる。そういう点でイルカは得してるんだけど、僕らはいろいろ感じてストレス発散してる。結局それって、僕らの気持ち次第じゃないかな、と思うんです。でも、自分の考えを変えるきっかけになったのは間違いなくフジだから。」
 | 草むらでビールにカルチャーショック! |
――フジのことで何か面白いエピソードありました?
「何回も同じことやらされて、ため息ついてたとこは見たことありますけど」
――えっイルカってため息つくんだ!(笑)。イルカって人間に近いっていうから、きっと喜怒哀楽もあるはずですよ。(しつこく)きっと笑うはず・・・。えっと、沖縄って気のエネルギーが強いって言われてますけど、沖縄という土地から感じたものって何かありましたか?
「時間に対する考え方や価値観が東京とは違うナーとは思いましたね。時間に追われてない感じ。・・・あの、草むらでビール飲みながら寝っころがってるオジサンとかいたんですよ。それは、僕にとってはなかなかできるものではなかったし、そういうところから価値観が違うと思ったんですけどね。」
――外でビール飲んだりしないんですか?
「しないですねえ、しますか?」
――ええ・・・。
「草むらで?」
――いや、草むらでなくても、そこらで・・・(笑)。
「へーっそりゃすごいことだと思いますね。青森とか東京でそういうの見たことないですし、いいなーっと思ったんですよね。」
――この映画では、考え方が変わったりいろいろ発見があったみたいですね?
「一番は動物のこと好きになったということです。動物のこと、自然に対しても大切に思えるようになったってことですね。」
――今まではどうだったんですか?
「動物や自然が人の命より大切とか、人の命と同じくらいに大切とは思えなかったところはありますね。自分の中で世界は人間界ということだった。でも、この作品が終わってからは世界は自然界になりましたね。」
――(手塚治虫の「ブッダ」を読め! と言いそうになりましたが、わかったんだからいいか、と押さえました。)じゃあ、部屋にも今までは植物とか置いてなかったんですか?
「置いてないですね。今は置いてますけどね。」
 | 人見知りで気分屋で心を閉ざしがち・・・ |
――それは、良かったですね。獣医の植田啓一さんてこの間「情熱大陸」に出演されてましたけど、見た感じ、淡々とした方ですか?
「いや、すごい熱い人ですよ。陽気な方で、現場を持ち上げてくれる半面、「この映画を見て、自分みたいな水族館獣医に興味持ってなりたいって思ってくれる人がいたら幸せだ」って真面目なこと考えてる人で、皆の前でオチャラケてるのにそのギャップが面白くて、そういう人だから、ずっと一緒にいれて、何でも喋れたんですけどね。」
――そんな風に人とすぐ仲良くなれるんですか?
「いや、人見知りっぽいって良く言われます」
――そうですよねえ。プレスシートにも「僕は心を閉ざしたがります。意識的に心を開こうとしてもまた閉ざしてしまう。それを動物はすぐに分かる。」って書いてますもんね。役者としてはそういうのってマイナスなのかな?
「この役は閉ざした方がいいとか、染まらない方がいいとか、様々じゃないですかね。ただ、人見知りっていうのは、直した方がいいよ、とか誤解されるよ、っていっつも注意されるし・・・自分ではそこまで直そうと(笑)思わなかったりはしますけどね。」
――いいんじゃないですか? じゃあ、植田さんには開いてたわけですね?
「う~ん。植田先生とはすぐ仲良く喋れた。そういう人っているんですよね。波長のあう人。あんまりいないんですけど、何がそうさせるのか分かんないんですけど。もしかして、自分の興味のある話題をポッと出されて、ガッとそれに喰いついちゃうとか・・・分かんないですね。僕も何かいっつも言ってること変わるし、気分で喋ってるとこあるんですよね。」
――人見知りで気分屋・・・なんですね?
「気分屋ですね。でも、前合った人でも今度は合わないってありますよね? 波長って毎回毎回同じじゃないんですよね、きっと。」
――体調もありますからね。
「でも、今回水族館の飼育係の方とも仲良かったですね。いい現場でした。そういう人が誰もいなかったらちょっとまずかったんですけど・・・。」
――どうまずいんですか?
「誰もすがる人がいないと大変じゃないかナーっと思いますね。」
――(すがるって・・・カワイイ! 子供みたいですね・・・。)(笑)いつもすがる人は誰かいるんですか?
「いる時もいない時もあります。いない時は喋んないですね。一人でいます。別に苦痛じゃないですよ・・・。」
 | 私生活を充実させることが全てに繋がっている |
――ふ~ん。あの、日々心がけてることってありますか? 役者としてと、日常生活の両方で。
「役者として意識してることはまったくないですね。私生活を充実させて生きることが全てに繋がっていると思うから。日々何かを感じてることが大事だと思ってます。日記を去年の10月からつけてるんですが、感じたことを言葉にして残すようにはしてます。きっかけ?書かないと忘れちゃうから。」
――では、最後に「ドルフィンブルー」について一言。
「この作品を通して、人が人以外のものの命を救うことはすごいことなんじゃないかと思いました。そのことに協力する人たちがいるってすごいこと。そういうことを感じてもらえたらと思います。」
――じゃっ写真を・・・。(撮りながら)役者ってもともと目指してたんですか?
「いいえ。東京に出たいなーとは思ってたんですが、何かしようとは思ってなくて、なんかあるんじゃないかなーっと漠然と思ってました。実際何かあったから(オーディションに受かった)僕は本当に幸せ者だと思いますよ。あっ自分で応募したんじゃないですよ。そういう人芸能界多いですよね。」
――役者は楽しいですか?
「演じるのは楽しいですね。でも、役者をやったことで私生活そのものもすごく充実するようになりました。この映画みたいに今まで知らなかったいろんな物事を教えてもらえるし、僕以上に幸せな人いないと思ってます。」
――そうですねー。ありがとうございましたー!!
☆最初何度か目を合わせただけで、途中まで全然こちらを見ずに答えていたのが印象的でした。慣れてきて、熱が入って口調が早口になるとかすかに訛るのがご愛嬌。まだ22歳。大切に育てられた子供の面影がチラホラ見える男の子でした。甘いもの好きそー!(やはり、好きだそうです。)
文・写真/一宮千桃