 | 初めて試写を観たときは、 恥ずかしくてたまらなかったです |
――「ニヤニヤしながら撮った」との監督の言葉どおり、他人の恋愛を覗き見しているような感覚で、完成作を観てしまいました。
「そうですよね。私も初めて試写を観たときは、恥ずかしくてたまらなかったです」
――ユリのような女性をどう思いますか?
「“魅力”という文字がとても似合う人ですね。台本を読んで、とても魅力的な女性だと思いました。ほかにあまり説明する言葉がみつからない。というか、ユリはどこか別の次元に生きている感じがします。だから演じるにあたっては、自分がもつ既成概念を完全に取りはずすことにしました。ユリの何がすごいかというと、境界線がまるでない。フツーに生きていたらゼッタイにならない、本当にフラットな佇まいの女性です。同時に、監督がいう『同性に憎まれない、イヤミのない』キャラクターにするためにも、ちょっと次元の違うところに居させることが、彼女を守るすべだと思いました」
――ユリは夫の猪熊さんと幸せそうな結婚生活を送りながら、みるめとの恋愛に走ります。彼女はそれぞれに、何を求めていたのでしょう?
「たぶんユリは……双方に同じものを求めていたような気がします。もちろん、どちらもまったく違うタイプですが、ユリにとっては何か拠りどころがあるのだと思います。心地のいい場所として、ふたりが居たという。たとえば、私が過去に好きになった相手を思い出しても、みんな全然タイプが違いますから。でもきっと、似ている点もどこかにある。外見も含めて違うタイプの異性を好きになる感情は、自然なことだと思いますね」
――つかみどころのないユリの内面に、近づいていけました?
「ユリの気持ちはハッキリ分からないですけど、ただ、生きるうえでユリが、どうしていいのか分からないのは分かる。みるめのことを好きなのも、猪熊さんのことを好きなのも分かる。そして猪熊さんから離れられないと思っているのも分かる。その程度でしょうか? ユリについて何かを具体的に決めてしまうと、彼女の特別さが失われる気がして。ユリは外国人、というくらいに自分から引き離して、抽象的な捉え方をしました。でも難しかったですね」
――ユリのような生き方には憧れますか?
「いいえ。もし実際にユリだったらツラい、しんどいと思いますよ。でも、演者という事から考えると気持ちがよかったというのはあります。重力を感じないような、軽い気分になりますね」
――まるで等身大の永作さんを観ているような、自然な演技でした。
「演じているのは私ですから。力を抜けば抜くほど、残念ながら私が出てくるのかもしれません(笑)」
――リアルな恋愛感情がもてたと松山さんは公言していますが、永作さんは如何です?
「私も完全に(みるめに)恋していましたね。猪熊さんにも。猪熊さんはまた、違う安心感があるんですよね。ゆったりと時間が流れているような……。とても楽しかったです」
――現場では、カットの声がなかなか掛からなかったそうですね。
「セリフを言い終わっても、カットの声がないんです。ということは、私たちは芝居を続けるために、アドリブで会話をつくっていかなければならなくて。私たちが必死になっているのを、監督も楽しんでいたんだと思います。監督の手のひらで踊らされて大変でした。結果、男女ふたりがリアルに遊んでいるふうになるしかないので。もしかしたら監督は、その感じを狙っていたのかもしれないですね」
 | キャストは全員“すっぴん”!? |
――井口監督によると、今回、キャストは全員“すっぴん”だったとか。その話をされたときに、抵抗はありませんでした?
「台本を読んだときに、化粧をしているイメージがユリにはなかったんですよ。化粧をすることはイコール、他人の目を意識している行為なので。きっと監督も、ユリに対して同じような印象を抱いたのでしょうね。現場に行って『メイクをしていない感じでイイですよね?』『いいです』と、すんなり」
――とはいえ、素顔にみえるフルメイク、という方法もアリだったのでは?
「そういえば、『本当にまったく(メイク)しないなぁ』とは思いましたね。しかも、なんとなく最初は眉毛をちょっと……と、手を加えていたんですけど。そのうちに何もしなくなり(笑)。でも、メイクをしないことで私のなかに解放感が生まれて、こういう作品になったと思うんです。途中で『やっぱり少しキレイにしとく?』となる現場が多いなか、想像していたとおりの飾らないユリを演じきることができたのは、うれしいですね」
――素顔もかわいらしいユリは、まったく年齢を感じさせない女性ですね。
「演じるうえで、“39歳”を意識するのはやめようと思いました。私自身はまだ経験していないので、39歳の女性の気持ちが分かるわけでもありませんが。ただ、そんなに変わらないと思うんですよ。だから39歳だからこうしよう、こうなるだろう、という考えは捨てて。年齢はどうでもいいと、最初からハズしていましたね」
――永作さんご自身も、普段から年齢は意識しないのでしょうか?
「意識しないですね。年齢を重ねるにつれ、どうでもよくなっていったような……。“いまの私”がどう思うか、どうしたいかのほうが大事です。その“人となり”が形成されていくのが大事なのであって、年齢はもう付属品くらいの感覚です」
――スリムでうらやましいですが、体型維持のポイントや、お勧めのエクササイズはありますか?
「う~ん……食べすぎないことですね。私は幸い(体型が)あまり変化しない人なので。ずっと昔から、食べたいものを食べている、そのストレスのなさがイイのかもしれませんね。ただやっぱり、代謝をよくするデトックス的なことは、すごく大事だと思っています。たとえばお風呂で汗を流す、感動して涙を流す、といったような。最近は涙とご無沙汰なので、次のデトックスタイムが楽しみですね(笑)」
――個人的に“女優・永作博美”のスゴさを思い知ったのは、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』でした。永作さん本人が考える、転機となった作品や人との出会いは何ですか?
「私は映画デビューがすごく遅かったので。いちばん初めにお仕事させていただいた、黒沢清監督の『ドッペルゲンガー』は、やっぱりとても印象に残っていますね。すごく興味深い世界だと思わせてくれましたし、黒沢監督はなんてカッコいいんだとも思ったし(笑)。そのあとの『好きだ、』も、石川(寛)監督との出会いも大きかったです」
――映画とテレビドラマでは、撮り方が違いますか?
「奥行きが違いますね。映画はステージが広い感じがします。お芝居をお芝居と捉えなくていいような。テレビでは、細かくお芝居をしなければいけない気になってくる。映画はなぜか、お芝居をしなくてもイイ気になってくる。そこが大きな差ですね」
取材・文/柴田メグミ