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Introduction

外見も含めて違うタイプの異性を好きになる感情は、
自然なことだと思いますね

『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』の演技で、第32回報知映画賞・最優秀助演女優賞に輝いた永作博美さん。最新作『人のセックスを笑うな』では、20歳年下の学生みるめを翻弄するヒロイン・ユリを体現しています。撮影中には、みるめ役の松山ケンイチさんが本気モードで恋に落ちたという(!)年齢不詳で自然体のユリ。“おとなキュート”な永作さん本人とリンクする新時代ヒロインは、どのように創られたのでしょう? 30歳を過ぎて映画女優として開花し、今後ますますの活躍が期待される永作さんを直撃しました。

interview初めて試写を観たときは、
恥ずかしくてたまらなかったです

――「ニヤニヤしながら撮った」との監督の言葉どおり、他人の恋愛を覗き見しているような感覚で、完成作を観てしまいました。

「そうですよね。私も初めて試写を観たときは、恥ずかしくてたまらなかったです」

――ユリのような女性をどう思いますか?

「“魅力”という文字がとても似合う人ですね。台本を読んで、とても魅力的な女性だと思いました。ほかにあまり説明する言葉がみつからない。というか、ユリはどこか別の次元に生きている感じがします。だから演じるにあたっては、自分がもつ既成概念を完全に取りはずすことにしました。ユリの何がすごいかというと、境界線がまるでない。フツーに生きていたらゼッタイにならない、本当にフラットな佇まいの女性です。同時に、監督がいう『同性に憎まれない、イヤミのない』キャラクターにするためにも、ちょっと次元の違うところに居させることが、彼女を守るすべだと思いました」

――ユリは夫の猪熊さんと幸せそうな結婚生活を送りながら、みるめとの恋愛に走ります。彼女はそれぞれに、何を求めていたのでしょう?

「たぶんユリは……双方に同じものを求めていたような気がします。もちろん、どちらもまったく違うタイプですが、ユリにとっては何か拠りどころがあるのだと思います。心地のいい場所として、ふたりが居たという。たとえば、私が過去に好きになった相手を思い出しても、みんな全然タイプが違いますから。でもきっと、似ている点もどこかにある。外見も含めて違うタイプの異性を好きになる感情は、自然なことだと思いますね」

――つかみどころのないユリの内面に、近づいていけました?

「ユリの気持ちはハッキリ分からないですけど、ただ、生きるうえでユリが、どうしていいのか分からないのは分かる。みるめのことを好きなのも、猪熊さんのことを好きなのも分かる。そして猪熊さんから離れられないと思っているのも分かる。その程度でしょうか? ユリについて何かを具体的に決めてしまうと、彼女の特別さが失われる気がして。ユリは外国人、というくらいに自分から引き離して、抽象的な捉え方をしました。でも難しかったですね」

――ユリのような生き方には憧れますか?

「いいえ。もし実際にユリだったらツラい、しんどいと思いますよ。でも、演者という事から考えると気持ちがよかったというのはあります。重力を感じないような、軽い気分になりますね」

――まるで等身大の永作さんを観ているような、自然な演技でした。

「演じているのは私ですから。力を抜けば抜くほど、残念ながら私が出てくるのかもしれません(笑)」

――リアルな恋愛感情がもてたと松山さんは公言していますが、永作さんは如何です?

「私も完全に(みるめに)恋していましたね。猪熊さんにも。猪熊さんはまた、違う安心感があるんですよね。ゆったりと時間が流れているような……。とても楽しかったです」

――現場では、カットの声がなかなか掛からなかったそうですね。

「セリフを言い終わっても、カットの声がないんです。ということは、私たちは芝居を続けるために、アドリブで会話をつくっていかなければならなくて。私たちが必死になっているのを、監督も楽しんでいたんだと思います。監督の手のひらで踊らされて大変でした。結果、男女ふたりがリアルに遊んでいるふうになるしかないので。もしかしたら監督は、その感じを狙っていたのかもしれないですね」

interviewキャストは全員“すっぴん”!?

――井口監督によると、今回、キャストは全員“すっぴん”だったとか。その話をされたときに、抵抗はありませんでした?

「台本を読んだときに、化粧をしているイメージがユリにはなかったんですよ。化粧をすることはイコール、他人の目を意識している行為なので。きっと監督も、ユリに対して同じような印象を抱いたのでしょうね。現場に行って『メイクをしていない感じでイイですよね?』『いいです』と、すんなり」

――とはいえ、素顔にみえるフルメイク、という方法もアリだったのでは?

「そういえば、『本当にまったく(メイク)しないなぁ』とは思いましたね。しかも、なんとなく最初は眉毛をちょっと……と、手を加えていたんですけど。そのうちに何もしなくなり(笑)。でも、メイクをしないことで私のなかに解放感が生まれて、こういう作品になったと思うんです。途中で『やっぱり少しキレイにしとく?』となる現場が多いなか、想像していたとおりの飾らないユリを演じきることができたのは、うれしいですね」

――素顔もかわいらしいユリは、まったく年齢を感じさせない女性ですね。

「演じるうえで、“39歳”を意識するのはやめようと思いました。私自身はまだ経験していないので、39歳の女性の気持ちが分かるわけでもありませんが。ただ、そんなに変わらないと思うんですよ。だから39歳だからこうしよう、こうなるだろう、という考えは捨てて。年齢はどうでもいいと、最初からハズしていましたね」

――永作さんご自身も、普段から年齢は意識しないのでしょうか?

「意識しないですね。年齢を重ねるにつれ、どうでもよくなっていったような……。“いまの私”がどう思うか、どうしたいかのほうが大事です。その“人となり”が形成されていくのが大事なのであって、年齢はもう付属品くらいの感覚です」

――スリムでうらやましいですが、体型維持のポイントや、お勧めのエクササイズはありますか?

「う~ん……食べすぎないことですね。私は幸い(体型が)あまり変化しない人なので。ずっと昔から、食べたいものを食べている、そのストレスのなさがイイのかもしれませんね。ただやっぱり、代謝をよくするデトックス的なことは、すごく大事だと思っています。たとえばお風呂で汗を流す、感動して涙を流す、といったような。最近は涙とご無沙汰なので、次のデトックスタイムが楽しみですね(笑)」

――個人的に“女優・永作博美”のスゴさを思い知ったのは、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』でした。永作さん本人が考える、転機となった作品や人との出会いは何ですか?

「私は映画デビューがすごく遅かったので。いちばん初めにお仕事させていただいた、黒沢清監督の『ドッペルゲンガー』は、やっぱりとても印象に残っていますね。すごく興味深い世界だと思わせてくれましたし、黒沢監督はなんてカッコいいんだとも思ったし(笑)。そのあとの『好きだ、』も、石川(寛)監督との出会いも大きかったです」

――映画とテレビドラマでは、撮り方が違いますか?

「奥行きが違いますね。映画はステージが広い感じがします。お芝居をお芝居と捉えなくていいような。テレビでは、細かくお芝居をしなければいけない気になってくる。映画はなぜか、お芝居をしなくてもイイ気になってくる。そこが大きな差ですね」



取材・文/柴田メグミ

Profile

永作博美
1970年10月14日生まれ、茨城県出身。
1994年の『陽のあたる場所』に始まり、『青い鳥』『週末婚』『Pure Soul』『巧名が辻』など、数々のドラマに出演。ひとり芝居に挑戦した『水物語』(演出/木野花)や『ドラクル God Fearing Dracul』(演出/長塚圭史)ほか、舞台でも活躍する。映画デビュー作は、2003年の『ドッペルゲンガー』(黒沢清監督)。その後も『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』『クローズド・ノート』など気鋭監督の話題作で、確かな演技力を披露している。
2008年に公開予定の作品に『同窓会』『クローンは故郷をめざす』がある。

Pick up Artist

(C)2008「人のセックスを笑うな」製作委員会

1月19日より、シネセゾン渋谷ほか
全国順次ロードショー

純朴な美術学校生、みるめ(松山ケンイチ)は19歳。39歳の非常勤講師ユリ(永作博美)に絵のモデルを頼まれた彼は、その自由奔放な魅力に惹き込まれてゆく。ユリとの関係を深め、有頂天になるみるめ。けれどユリには夫がいた。みるめに想いを寄せる、同級生のえんちゃん(蒼井優)は……。人気作家・山崎ナオコーラさんの文藝賞受賞作を『犬猫』の井口奈己監督が映画化した、ポップでせつないラブストーリー。




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