Fe-MAIL(以下F)-最初に台本を読んだ時、どんな印象を持ちましたか?
塚本高史(以下T)-僕も男であり息子なので、この作品の父親との付かず離れずの関係は、実際にある状況だなと共感しました。それから、“過去に行って昔の父親に会える”という部分は、主人公が羨ましいと思いましたね。過去を見て、自分の中で父親を解釈して、現在の父親との関係を変わるなんて、幸せですよね。
また、“過去に行く”というファンタジーっぽい設定があるけれど、僕はこの作品を人情映画にしたかったんです。現場に入った時、ファンタジー映画にならない様、気をつけて取り組もうと思いました。そして、自分がやるからこその主人公、僕なりの若者・息子にしたいと思いながら、取り組みました。
F-完成した映画をご覧になった感想を教えてください。
T-最初の五日間くらいで、父親とのシーンを全部撮っちゃったんですよ。その後に他のシーンを撮ったので、「中身どうなってんのかな?」と気になっていて、出来上がりが楽しみでした。完成品を観ても、僕は本人なので客観的には見れないですが、全編通して気持ちが繋がっていたと思うので、良かったと安心しました。
F-窪田監督は初の長編映画だったそうですが、監督とのお仕事はいかがでしたか?
T-長編映画初監督の割には、結構譲らない方でした(笑)。この作品に対する、自分なりの世界観を、しっかりと持っている方でしたね。例えば、僕らが何か提案しても、「あー、そっちの方が良いから、そっちにしよう」と、すぐに人の意見につられるのでは無く、「一回それもやってみて」と言う感じだったんです。ディスカッションの時間も、たくさん作ってくれましたし、“一緒に作れた”という感じですね。
また、僕は、気持ちが入らなかったらセリフは言いたくないし、動きが制限されるんだったらセリフは変えても良い、と思っているんです。監督もそういう方だったので、台本のまま作っていったかと言われたら、そうでも無くて。時間掛けながら、良い感じで仕事できたかなと思います。
F-父親役の國村隼さんとは初共演だったそうですが、どんな俳優さんでしたか?また、一緒にお仕事をしてみて、いかがでしたか?
T-「『イエスタデイズ』という作品に参加して、何を得ましたか?」と聞かれたら、「國村隼さんと出会えた事が一番の収穫です」と答えてしまう位、素晴らしい方でした。演技に関してはもちろんですが、演技以外にも、撮影の合間で時間がある時に、ずっと一緒に居て下さった事が、僕は本当に嬉しくて。良い意味で子供の様な人、子供の心を持っている役者さんで、とっても良い方でした。
また、撮影の合間に國村さんと、役とは正反対の時間を過ごせた事で、芝居にも集中できました。一つ一つのセリフも、考えながら言うのでは無く、本当の父親と喋っている感じだったんです。意味を持たせたら、とても深い意味になってしまう言葉を、お互いさらっと言ってしまう。僕は、そういうものが親子の会話だと思うんですが、その辺りも自然に出来たので良かったなと思います。
F-塚本さんが、一番お気に入りのシーンはどこですか?
T-澪さんと二人で部屋を出て行くシーンも、印象的なシーンだと思うんですけど、やはり僕は、最後の親父との海のシーンですかね。
F-あのシーンも最初にまとめて撮られたと伺って、驚きました。本当に、自然な感じで演じてらっしゃったので…。
T-それもやはり、國村隼さんの、お導きだと思います(笑)。
F-ちなみに、実際のお父様と塚本さんは、どのような関係ですか?
T-付かず離れずというか、多くを語らないと言うか…、そういう感じですね。別に親父と恋愛の話をする訳ではないですし(笑)。親父との関係は…、血の繋がった友達の様な感じ、ですかね。
F-主人公の聡史は、若かりし頃の父親の恋人に心惹かれていきますが、これはとても複雑な心模様ですよね。どの様に演じられたのですか?
T-…血は争えねぇな、と思いましたね(笑)。父親が好きだった人だから好き、では無くて、何か…、素直に惹かれたんでしょうね。
でも原作では、「ずっと好きでした」という様な聡史のセリフがあるんですけど、僕は監督に、そのセリフは言いたくないと言ったんです。聡史の澪さんに対する感情は、恋愛感情じゃないと思ったので。澪さんは現代の人ではないと聡史も分かっているので、憧れで留めたんじゃないかと。そして、ただの彼氏彼女・好き嫌いを通り越した、見守っていたい存在だったんじゃないかと思うんです。それで僕は、「ずっと好きでした」では無く、「ずっと見てました」と言わせて頂きました。
F-塚本さんの、撮影中のリラックス方法は何ですか?
T-黙らない事、ですね。僕、思った事を結構口に出すタイプなので。現場でも、何をして待ってて良いか分からない時は、「何やってんのー!?」って、スタッフが仕事をしている所に入っていって、一人で騒いでました(笑)。
それから、現場にギターを持って行って、カメラマンとPCで曲を作ったり、それを監督に聴かせたり、監督に声を入れて貰ったり(笑)。
F-この映画は、人生の「迷い」や「決断」が大きなテーマになっていますね。今自分の将来に迷っている人達に、何かアドバイスはありますか?
T-僕は、迷う事を幸せな事だと思うんです。迷いもせずに「もう、いいや」と、簡単に投げ出してしまったりする世の中ですから。迷えるのは凄く幸せで、“天秤”があるからこそ迷う訳ですが、何かと何かを天秤にかけた時、重い方に行けば良い。迷っているものに、優先順位をつけて進んで行けば良いんじゃないかと、僕は思います。夢や目標が決まらないのは、決めていないから。何も決まっていないなら、どこへでも行けるのだから、とにかく一回、“決断”してみれば良いんじゃないかと思います。
F-ご自身が俳優になった時も、何かと何かを天秤にかけるような事があったのですか?
T-はい。僕は、ずっとサッカーをやっていたんです。ちょうどJリーグが開幕して、カズ全盛期の頃でした。「中学出たらカズみたいにブラジルへ留学しよう」って、すごく漠然とした思いがあったのですが、そんな時、母親がオーディションに応募して…。
自分から進んで俳優になった訳では無いんですし、「目立てればいいや」位の気持ちでこの世界へ入ったのですが、ここは、自分が楽に居られる場所なんです。偽らない自分で居られる…と言っても、偽る仕事(芝居)をしているんですけどね(笑)。
F-最後になりますが、女性読者に向けて、映画の見所をお願いします!
T-『イエスタデイズ』は息子と親父の話ですが、娘や母親の立場でも、絶対どこか共感してもらえる所があると思います。
また、一番近くに居る人ほど、その人の大切さが分からなかったりするものです。例えば、その人が“余命あと何ヶ月”と言われた時に、その人の為に何かしようと行動すると思いますが、そうじゃなくて、明日からでも、その人の為に何か行動する。そうすれば、毎日はもっと楽しくなるし、その人とも、今よりもっと良い関係になれると僕は思います。何かが起こる前に行動する素晴らしさを、この映画を観て感じて頂けたら嬉しいです。