Fe-MAIL(以下F)-市川さんは、この作品のどんな所に惹かれて、出演を決められたのですか?
市川実和子(以下I)-台本を読んだ時、最後のシーンがすごく良いな、と思ったんです。実は私、怖い映画が苦手なんです。精神的に辛いシーンもいくつかあると分かっていたのですが、全てすっ飛ばして、最後のシーンに惹かれて、ぜひやりたいと思いました。ただ、この映画の核でもある“京一の母親”という役を、子供のいない自分につとまるのか、自信がなかったので、監督にお会いした時、正直にお伝えしました。私が「“お母さんになりきれなかったお母さん”なら出来ると思います」とお伝えした所、監督も「逸子はそういう役だと思う」と言って下さったので、安心してお話を引き受けました。
F-本作品を始め、市川さんは実に様々な役を演じていらっしゃいますが、ご自身の中で、お仕事を引き受ける基準の様なものは、あるのですか?
I-以前は、あまり深く考えず、ただ「やってみたい」と引き受けることが多かった様に思います。最近は、何か少しずつ変わってきたみたいです。
F-そういう意味で、特定のシーンに惚れ込んだ本作品は特別なのでは?
I-そうですね。でも、最後のシーンを演じる以外、ほとんど何も考えてなかったので、いざ撮影に入ったら、思いの他辛くて…(笑)。やはり、子供を殺そうとするシーンや首を吊るシーンは、例え擬似(演技)でも大変辛い作業でした。自分がなくなってしまう様なことはなかったのですが、本当“あ~辛いなぁ…”って(笑)。家に帰ってから、何もせずボーっとしてしまう時もありました。
F-“全てを怖がる女”という特殊な役でしたが、逸子に感情移入はできましたか?
I-怖がったり、叫んだり、衝動的なシーンが多くて…、その時は感情移入というより、行動に伴って演技をしていきました。私は逸子の様に“見える”訳ではないし、聞こえないし…。でも、言葉って不思議なもので、「怖い、怖い」と言っていると、だんだん、本当に怖くなってくるんです。逸子の恐怖は計り知れないけれど、誰の中にもある、そういう気持ちが大きくなったことなのかもって考えてたんです。精神状態によって、ネガティブなイメージばかり沸くことってありますよね。例えば、“あの人、私のことをこう思っているんじゃないか”とか。そうやって、少しずつふくらませていきました。
F-逸子が幼い京一を抱きしめて泣く場面が、非常に印象的でした。見事に泣いてらっしゃいましたよね。あのシーンは、どの様に撮影されたのですか?
I-あのシーンは京一役の男の子を、本当に泣かせなきゃいけない場面だったので、本気で突き飛ばしたんです。突き飛ばされた彼はびっくりして泣き出して、そうしたら私もそこからは演技も何もなくなって…、という感じです。撮影が終わった瞬間に、監督が急いでやってきて「ごめんね~、嘘だよー」と、おもちゃをプレゼントしていました(笑)。
F-完成した映画をご覧になって、いかがでしたか?
I-見終わった直後は、もう、ただ単に怖かったって思ったんですけど、だんだん「やっぱり余り怖くなかったかも…」と。台本を最初に読んだ時に感じたものがあって、安心しました。
F-塚本監督はどんな方でしたか?
I-監督は実際にお会いすると、とても可愛らしい方で。話していると、顔をくしゃっとさせて笑われるんですよ(笑)。普段は優しくお話しして、常にニコニコしているんだけど、カメラを持つと一瞬で顔が変わる。演出している時の目は、非常に鋭かったです。その目を見るたび、怖いなぁとドキドキしながら(笑)、「この作品は、本当に監督の深い所から出てきた作品なんだな」と思っていました。
F-今回の役に関して、監督から何か具体的な指示はあったのでしょうか?
I-怖がる演技の指導など、ホラー的要素の演出がとても細やかでした。“見えないものに怯えている時の目”とか。完成したものを観て、監督のこだわりはさすがだなぁと、改めて思いました。他のキャストの演技も怖くて、「光石さんのほうが怖いですよ~」と、皆で“怖いキャラ”のなすり付け合いでした(笑)。
F-松田龍平さんとの共演はいかがでしたか?どんな方なのでしょうか?
I-彼がまだ十代の頃に、お仕事をご一緒させて頂いていて、初対面では無かったんです。今回、久しぶりに会ったのですが、なんだか、久しぶりな気がしなかったです。彼は、なんというか、大きい動物みたいですね。ゾウとかウミガメとか(笑)。普通にそこにいるだけなんだけれど、それだけでものすごく不思議な存在感があるんですよ。年を重ねるたびに、その存在感がどんどん大きくなっていますね。末恐ろしいですね、どこまで大きくなっちゃうんだろうって(笑)。
F-市川さんは、逸子と京一の親子関係をどの様に思いますか?
I-う~ん…。すごく、素直な関係だと思います。状況が状況ですけど、彼女と京一には、母と子という以前に、人と人としての関係があると思うんです。そこに、母と子の純粋な愛情もある。そういう人間関係の真意みたいなものを、この映画は二人を通して描いているのでは、と思うんです。映画を観て下さった方にも、それが伝わったら良いなと思いますね。
F-映画の話から脱線してしまいますが、スタイル抜群でとっても羨ましいです。体型維持のポイントや、オススメのエクササイズなどありますか?
I-私、楽したいタイプなんです。ジムとか大嫌いで(笑)。自転車が好きなので、割とどこへ移動するにも自転車なんですけど、これ良いですよ~。どこかへ行ったり、景色を楽しんだりしながら運動できるので(笑)。
F-現在、テレビ・舞台・映画と幅広く活躍されていますが、市川さんにとって、女優業の魅力とは?
I-うーん、何でしょう…?面白い人に会えるから、というのはありますね。人との出会いですかね。皆変わってるから…(笑)。
F-今後、やってみたい役などはありますか?
I-役というよりは、「ああ、そうそう!」と自分が共感できる作品に、これからも携わっていきたいですね。
F-最後に、この映画を観てくれる方へ、メッセージをお願いします。
I-ただ怖いだけじゃなく、見終わった後、ふつふつと温かくなったり、切なくなったりする映画です。言葉で言えない不思議なものが描き出されているので、ぜひ観てください。