Fe-MAIL(以下F)-本作品のオファーがきた時、栗野に共感されたそうですが、彼のどんな所に共感されたのですか?
成宮寛貴(以下N)-栗野は幼い頃、大好きなお母さんに嘘をついて、それが彼のターニングポイントになったんです。人生の中で、嘘をつくことは避けて通れないと思いますが、その中でも、“親の笑顔がみたい・怒られたくない”っていう思いから嘘をついたことって、自分にもあって。そして、親についた嘘によって、今の彼があるということが、凄く切ないんですが、彼の愛すべきポイントでもあると思いました。また、栗野の「この世界には二種類の人間しかいない。一生地べたに這いつくばって生きる人間と、そこから抜け出し高く高く上り詰める人間」という台詞も共感しました。彼は、“自分のいる所”を愛さず、上ばかりを見ているんですよね。僕も、十代の頃はそう思っていたので、自分と似ているなぁと感じました。
F-お仕事を引き受けられた理由は、栗野の役柄によるものが大きいのでしょうか?
N-もちろん、役柄にも興味を持ちましたが、この作品が、今の時代に凄く合っていると感じて、参加する意味があると思ったんです。栗野という役も、自分に合っているんじゃないかと。それが全てあわさって、やりたいと思いました。
F-栗野役を演じるにあたり、こだわった部分などありますか?
N-見た目から入っていくのが好きなので、今回も、まず彼の外見を決めていきました。勉強のために、渋谷や新宿にいるキャッチの人達を見学したんですが、今って、そんなにあからさまな格好している人は居ないんですよ(笑)。どうしようって悩んだんですが、風俗のスカウトマンであるということと、作品のタッチを考えて、やっぱり“ザ・キャッチ”という、分かりやすいスタイルを作ろうと思いました。髪の毛の色も、へアスタイリストさんと厳選して、洋服もチンピラのような格好をセレクトしました(笑)。中身は、とにかく口からデマカセな、“心に響いてこないキャラ”を心がけました。普通、役者は役に説得力を持たせようとして、一生懸命色々なことをするんですが、今回は“どれだけ説得力のないキャラクターにできるか”にこだわりました。喋り方も笑い方も、手のアクションもそうですね。動きを大げさにして、余計説得力がなくなるようなジェスチャーをしました(笑)。
F-役作りに関して、監督とどのようなお話をされましたか?
N-宮野さんとは栗野をどのように作っていくか、たくさん話しました。最初に本を読んだ時、栗野は嘘が上手い男だと考えていたんです。恋人が騙される訳ですから。でも、やっていくうちに、「嘘をつくのが凄く下手な男と、そんな男に騙されてしまう女の子」の方が、良いんじゃないかと思って。とにかく、栗野というキャラクターを観ている方に愛して貰わないといけない。そのためには、嘘が上手い男だとダメなんじゃないかって、監督と話したんです。そこから“説得力のないキャラ”を作っていきました。
F-撮影中、難しかったことや大変だったことはありましたか?
N-僕は、小さい頃から“人がどう思うか”を考えて生きてきたんです。自分がどう思うかより、相手がどう思うかが気になる。だから、皆と意見をあわせて、同じ格好をすることで安心感を得てきたんです。でも、役者の仕事は、人とは違う、“自分”を出さなくちゃいけない。ようやくそれに慣れてきた時、栗野という役を演じることになって。笑顔がニセモノに見えたり、思ってもないことを喋ったりする栗野を演じていると、「うっ…」ってなるんですよ(笑)。自分の良くない部分にフューチャーして広げていく作業は、恥ずかしいような、情けないような気分にさせられて。それを正当化せず、格好良くせず、情けない姿をさらすことが、凄く難しかったです。また、その演技を一般の人達が大勢いるロケ現場で披露するのは、凄く集中力を試されることでしたね。
F-今回、栗野のような(ちょっと情けない)役を引き受けたのは、なぜですか?
N-チャレンジですね。役者はたくさんいるし、特に僕の世代は豊作なんですよ(笑)。その中で、自分の長所も短所も出し惜しみしていても仕方ないなって。格好良い役、いわゆる“大道”ができる役者さんはたくさんいますが、僕はそういうタイプじゃないと思っているんです。
また、以前は、いただく仕事をほぼ全て受けるようにしてたんですが、徐々に、「この役は凄くやりたかった!」という気持ちがないと、頑張れない気がしてきて。最近は、自分がどういう役をやってみたいのか、どういう人と仕事をしたいのかを、しっかり考えるようにしているんです。自分がやりたいもの、楽しいと思うものを自分で見つけて、そういう人に声をかけていきたいなと。そういう意味で、今年は種蒔きの年でした。実は『ララピポ』の石田プロデューサーにも、自分から声をかけたんです。「もし僕に合う役があったら、ぜひ呼んで欲しい」って。石田さんは良い作品をたくさん抱えてる方で、以前から尊敬していましたから。
F-仕事の受け方を変えたのには、何かきっかけがあったのでしょうか?
N-楽しく仕事をしたいと思うようになったんです。この仕事って、辛いことも多いんですけど(笑)、それでも楽しいって思えるかどうかが、仕事を続けていけるかどうかだと気付いたので、自分が感じる“この仕事の良い所”を、もっと大切にしていこうと思ったんです。
F-完成した映画をご覧になった感想は?
N-最初に思ったのは、テイストは中島監督の作品と少し似てるけど、やっぱり宮野さんの作った宮野さんの作品なんだなぁということです。中島監督が作る世界より、少しダークで人物にフューチャーした作品になってるなと。愛情深い方だから、撮っていく内に、人物にもっと寄り添いたくなったんでしょうね。また、この『ララピポ』と3月公開の『ドロップ』で、かなり自分の力量を試されたし、やりきったという感じがあったんです。おかげで、『イノセント・ラブ』の昴役も『ブラッディ・マンデイ』のJ役も、今までとは異なる、素肌っぽい演じ方ができました。完成した映画を観て、次の段階に上がっていく自分を感じることができましたね。
F-作品の中で、一番好きなシーンはどこですか?
N-村上さんが自分の撮った映像をお金に変えているシーンかな。あと、彼女が田舎のお兄ちゃんに電話をしているシーンが何とも言えず好きですね。あの中で彼女は、自分をわきまえて、一番したたかに生きている。村上さんのシーンは、好きなシーンがたくさんあります。
F-登場人物達の生き様に、色々考えさせられる作品ですよね。
N-そうですね。お金を稼ぐのも、夢に向かって頑張っていくのも、すごく大変だなぁと思うんです。現実と向き合うのって、結構辛いことですけど、この映画のラストみたいに、どんな状況であれ、それを笑い飛ばして力に変えて前進できたら、ステキだなと思いましたね。
F-非常にお忙しいと思いますが、どんなことで生き抜きをされていますか?
N-そうですねぇ…。お茶かなぁ。今まで、あまり家でお茶を飲む時間を取ったことがなかったんですが、最近は一日の終わりに、その時飲みたいお茶を入れて、ベッドに入ってから飲むんです。中国茶とか、ハーブティーとか、アールグレイとか。今は、それがリラックスできる時間ですね。
F-お休みの日は、何をしていることが多いですか?
N-休日は余りベッドから出ないんですよ。ベッドまわりに、食事や飲み物を用意して、映画を3~4本続けて観ます。仕事モードの時とは違って、『ブリジット・ジョーンズの日記』とか、『キューティー・ブロンド』とか、分かりやすいコメディ作品ばかり。難しいことを考えず、笑って観ていられるので(笑)。
F-今年は、種蒔きの年とのことでしたが、今後どのように自分を育んでいきたいですか?
N-以前は、“三年後の自分”とか、“五年後のビジョン”とかっていうのを頑張って見ていたんですが、今は、濃い時間を過ごすためにも“今を生きる”のも良いんじゃないかと思っています。もっと色々なものがあるんじゃないかって、まだ期待してますね、自分に。自分の武器をどう上手く使うか、どう磨いていくか、そもそも武器が生かせる仕事なのか…。そんなことも考えつつ、とにかく楽しんで仕事をしたいですね。
F-最後に、ファンの方々へ一言お願いします!
N-生きることは結構大変だけど、せっかく生まれてきたんですから、楽しく生きなきゃって僕は思います。ダメな自分も笑い飛ばすことができたら、人生は楽しくなる。『ララピポ』が、現実を見つめ直すきっかけになれば嬉しいです。ぜひ観てください!