Fe-MAIL(以下F)-今回、ご自身初の悪役ということですが、オファーがあったとき、どんな感想を持ちましたか?
玉木宏(以下T)-悪役は、前からやりたいと思ってたんです。そんな中でプロデューサーから『MW-ムウ-』の原作を渡されて、結城役はどうですか? というお話を頂いて。ずっとやりたかった悪役ということと、手塚さんの作品ということで、もう何の迷いもなく、ぜひやらせてくださいとお伝えしました。
F-なぜ、悪役をやりたかったのでしょうか?
T-自分についたイメージを、常に壊していきたいと思ってるんです。結城の役は、今までのイメージを壊すのに最適な役だと思いました。それから、結城の行動は普段の生活じゃなかなか経験できないことですが、それをいかにリアルに表現するかが問われる、非常にやりがいのある役だと思いました。
F-先に原作を読まれたということですが、脚本を読んで、どんな感想を持ちましたか?
T-原作とは違う設定もあるので、脚本は少し違うテイストのようにみえました。でも、作品の根底にある「何が善で何が悪か」っていうテーマは、一切ぶれてないと気付いたんです。むしろ、より明確にみえるようになっているなと。設定の異なる部分も、それはそれで良いと思いましたね。原作にあるもの全てを詰め込んでしまうと、どこに見所を置いて良いのか分からなくなってしまうので。「何が善で何が悪か」っていうテーマの中で、結城役をしっかり演じれば良いと思いました。
F-結城をどう演じていこうと思いましたか?
T-原作を読んだときから、結城には“無機質な人間”という印象があったんです。それは脚本を読んでも変わらなかったので、どこか機械的な人間ということを意識して演じました。歩き方や話し方、それから目ですね。人って、喜怒哀楽の感情が目に表れると思うので、それをできる限り抑えようと心がけていました。
F-実際演じてみて、結城に対する印象の変わった部分はありましたか?
T-そうですね…。演じてみて、結城は悪役じゃないと思いました。もちろん法律として、そういうことをしちゃいけないって分かってますけど、彼の行いは彼にとって正義でしかなくて、演じていて悪という印象は全くなかった。それが最大の違いでした。
F-本作は大掛かりなアクションシーンも話題ですが、撮影中に印象に残ったことや苦労されたことはありますか?
T-色々なところで撮影させてもらいましたけど、やっぱりタイでの撮影は1ヶ月近くあったので印象に残ってますね。アクションに関しては、僕を中心に周りの人達が振りまわされる作品なので、僕は余りアクションシーンがなかった気がします(笑)。ただ、湖に潜るシーンは大変でした。去年の5月頃に千葉の貯水池で撮影したんですが、その頃役作りのために体重を落としていたんです。だから体脂肪が4%くらいしかなくて(笑)。体って、体脂肪が減りすぎると浮かなくなるんですね。水泳は得意なんですけど、その時は体が全然動かなくて、生まれて初めて溺れそうになりました(笑)。5月だったので水温がかなり低くて寒いし、本当に死ぬかと思いましたね(笑)。
F-完成した作品をご覧になって、いかがでしたか?
T-今までないほどスケールの大きい作品だと思いました。この作品に関われたことが、純粋に嬉しいと感じました。
F-お気に入りのシーンはありますか?
F-なんだろうなぁ…。自分の出ているシーンだと、最初の誘拐殺人のシーンですかね。結城の計画がスタートするシーンなので、そこで結城という人物を確立させなきゃいけない。観ている人に印象付けないといけないので、そこは唯一目を強くしたんです。でも監督から「ちょっと強すぎる」と言われて。何パターンか撮ったんですが、結局強いパターンを使ってくれていたので、嬉しかったですね。
F-結城と救おうと苦悩する神父・賀来を演じた山田孝之さんについて教えてください。共演は、ドラマの「WATER BOYS」以来ですよね?
T-そうですね。でも前回(WATER BOYS)は、ほとんど絡みがない役だったので、こうやってガッツリやらせてもらったのは初めてですね。お互い、前に共演したときとは全然違う仕事を経験して、色々なものを吸収して、そんな中でまた共演できたのは凄く嬉しかったです。僕もそうなんですが、山田君も作ったイメージを壊していきたいっていう俳優なので、その点でも、新しい山田君が見られたことが刺激になりました。
あと、山田君は良い意味でのアナログ人間というか、余り器用な人間じゃないと思うんですよね。だからこそ、毎回役に没頭していくんだと思いますけど。例えば、僕が賀来を殴るシーンを撮影するときも、痛みを分かった上で芝居をするために、自分の体を痛めつけてるんですよ、自分で殴って。僕にも、「当たっても全然平気なんで、本気で来てください」って言ってくれて。僕も彼の撮影前の行動を見ているから、「ああ、当たっても本当に大丈夫なんだな」って安心しました。「絶対当てないでくださいね」って言われてたら、やり難かったと思いますし。
F-でも、「さぁどうぞ、本気で来てください!」って言われたら、逆にやり難くないですか?
T-いや、大丈夫です(笑)。もちろん異性だったら、そうはいきませんけどね。
F-(笑)。役作りに関して、玉木さんと山田さんでは取り組み方が少し違うようですね?
T-う~ん、僕もそんなに器用な方ではないですけど、「スタート!」って言われれば瞬間的にスイッチが切り替わるし、撮影の後はあまり役を引きずらないですね。山田君はずっと役を引きずっちゃうって言ってました。暗い役が続けば暗くなっちゃうって。僕はそれが全くないので、そういう部分は違うかもしれませんね。
F-では今回の撮影中も、山田さんはずっと賀来のままだったんでしょうか?
T-そうですね、ずっと難しい顔してました。唯一、ご飯を食べてるときは普通に戻ってましたけど(笑)。
F-(笑)。ちなみに現場で、監督とはよく話し合いをされたりしましたか?
T-もちろんありましたね。色々なシーンがありますけど、その中でいかに結城らしさを出すかっていうことは、かなり綿密に話をしました。結城だったらこうするんじゃないかって、監督が思うところと僕が思うところとすり合わせて。
F-今回、岩本監督と一緒にお仕事をしてみて、いかがでしたか?
T-凄く刺激のある監督でした。撮影に入る前、参考のために監督の作品を観たんですが、明るい作品が多いので、あまり参考にならなくて(笑)。撮影中も、最終的にどんな作品になるのかが、あまり明確に見えなかったんですよ。ここまで見えないのも初めてというくらいに。でも、完成した作品はしっかり目指していた作品に仕上がっていたので、「あ、やっぱりビジョンがしっかり見えてる人なんだな」って、改めて監督の凄さを感じました。
F-本作の見所、注目して欲しい点などはありますか?
T-この作品のテーマである「何が善で何が悪か」っていうのは、考えても考えきれないことですけど、答えがないからこそ、おもしろいんだと思います。原作を知っていても知らなくても、観て下さった方にはそのテーマを感じて貰いたいですね。それから、結城のような人物が主人公になることって、今までの邦画では少なかったと思うので、そこも見所の1つかと思います。気持ちが高揚したまま見終われる作品ですので、純粋に大きなスクリーンで観てもらうことが一番嬉しいですね。
F-初の悪役を演じ終えて、玉木さんに残ったものは何でしょうか?
T-残ったものは…まだ分からないですね。きっと公開した後か、もうちょっと後に自分で感じられるのかもしれません。ただ、新しいジャンルの役にチャレンジできたこと自体に凄く意味があると思ってます。本当に、やれるところまでやったので、早く皆さんに届けたいと思うだけですね。
F-今年は出演映画の公開ラッシュですね。特別な年、という思いはありますか?
T-ありますね。僕は早く30代になりたいと思っているんですが、それと同時に、20代でいかに色々なものに触れられるかで30代が決まる、とも思っているんです。30代に入る前の最後の1年、29歳の年に、今までないほど公開数が多い。しかも公開される3作とも、全然違う作品なので、毎回違ったイメージを提供できる。凄く意味のある1年だなと思います。20代でやれることは全てやった、という感じはありますね。
F-次にやってみたい役はありますか?
T-それが、明確に見えないんですよね。ただ、20代って若手と言われがちですが、30代になると言われなくなるじゃないですか。それが僕にとっての心地良い空間なんじゃないかと思います。より責任感も沸くだろうし、役の重みも絶対変わってくると思うんです。例えば、今まで研修医だったものが医者になれるとか、弁護士の役ができるとか。そういった役に早くチャレンジしてみたいと思ってます。
F-では最後に、役者として日々心がけていることがあったら、教えてください。
T-フィクションでもノンフィクションでも、どんな状況にあっても、役者はリアルを追求していかなきゃいけないと思うんです。実際には誰も見たことのないものでも、リアルを感じさせることで初めて、様々な印象をお客さんに与えることができる。そのためには、日々色々なものに触れて、イメージして、感受性を豊かにしないといけない。常に何かに触れることは忘れないでいたいし、役者として、そうあるべきだと思ってます。
F-ありがとうございました!