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2月5日update
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「絵」とは一体何なのか?
石井一男という画家を知ったのは「情熱大陸」というテレビ番組でのことだ。現在66歳の彼は、神戸の小さな家でひっそりと質素に絵を描く暮らしを長年している。つい最近までまったくの無名だった。そんな彼が描きつづけている「女神像」が密かな人気を呼んでいる、という内容だった。 正直私は「女神」の絵はピンとこなかったのだが、彼の暮らしぶりに妙に惹かれた。朝6時起床。お粥と惣菜(夕食の残り)の朝食後、掃除洗濯(ゴム手袋着用)。その後絵を描く。夕方になると散歩を兼ねて近くの市場へ半額になった惣菜を買いに行く。しめて300円の買い物。それを皿に綺麗に移し替え、温めずに食す。散歩では電車に手を振り、「たまに(手を)振りかえしてくれたりするの」と嬉しそうに言う。私はその一言で「この人、いいなあ~」と思った。一瞬だけど、手を振った方も振りかえした方もお互い心が温かくなるだろう。まったく些細なことだけど、そんな些細なことが弱い人を生かすのだ。 数日後、私は石井さんの清廉な暮らしぶりがもっと知りたくなった。たぶんそんなに惹かれたのは、私のモノにあふれた暮らしぶりが彼と正反対だったせいだろう。そして読んだ本著は、石井さん自身のことよりも、彼の絵を巡る人々のドラマを記したものだった。そういう意味で、最初からギャラリー島田のオーナー(石井さんを世に出した方)である島田誠さんのことを延々書いているので、ん? と思ったのだが、読み終わってみると、これは島田さんのことを書いた本でもあるのだな、と痛く納得した。 石井さんは小さい頃から絵を描くのは好きだったけど、本格的に描くことは長続きせず、46歳から溢れるように絵を描きだす。49歳の頃体調を崩し死を意識する。そして島田誠氏に一本の電話を入れる。彼の絵を見て仰天した島田さんは個展を開くのだが、絵の前で動かない人、涙ぐむ人、何度も足を運ぶ人、絵を買ったことないのに購入する人と、その絵は多くの人の心を打っていった・・・。 私が思わず涙してしまったのは、石井さんの個展を開いている大阪の画廊「天音堂」のご主人である山口さんが、身障者で19歳で亡くなったお嬢さんの天音さんについて語る部分である。ここには身障者の家族を持った人の「幸福」が書かれている。それから、島田さんの奥様が亡くなられた折のお別れ会で配られたという奥様の文章にも静かに感動した。「生きてきた姿勢」が見えるようだった。 ベテランの後藤正治氏の文章は清明でいて丁寧な取材は読み応えがあり、パズルのように重ねていくエピソードは凝った構成だと分かる。画廊の仕組み(売り上げの取り分の%とか)や、神戸の歴史や、病名や治療の方法など詳しい描写は興味深いとともに深い読後観を残す。彼も石井さんの絵に惹かれた一人である(2枚購入してます)。 私は星野道夫の写真を観て泣いたことはあるのだが、絵を観て泣いたことはない(絵は観るのも描くのも好きだ)。欲しいと思った絵は鴨居羊子の絵だけだ(それは、絵の中に私がいたから)。弟の鴨居玲の絵は大好きだが、怖い(本書には鴨居玲氏のことや、私自身神戸新聞系の出版社「エルマガジン」に勤めていたので、神戸新聞の話や知り合いの名前が出てきてて本著はそういう意味でも面白かった)。多くの人の涙を流させ、胸を打つ石井さんの絵をじかに観てみたい、と本著は読み終わって思わせる。 私事だが、現在写真展を大阪で開いている。私の写真は心を削って撮っているだろうか? 石井さんのように自身を移しこんでいることは同じだが、私の一部分を切り撮っている、という感じでもあり・・・と写真と絵はまた違うのかもしれないけど、しばし考え込んでしまった。でも、「絵」ってなんだろう? とものすごく考えさせられた本だった。 今日、ギャラリー島田に初めて電話したら今日が石井さんの個展の最終日だと言う! ああーっ残念っ。でも島田さんと少しお話ができた。落ち着いた渋い声が印象的な方でした。今度の石井さんの個展は9月11日~23日だそうです。絶対行くぞ! 行って「絵」ってなんなのか、少しでも感じられたらいいな。
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とにかく、みんな本を読もうよ!!
私は藤原正彦さんの大ファンだ。著作もほとんど読んでいる。その彼が9人の知識人と対談した本著。しかも、対談相手の曽野綾子氏、山田太一氏、一歩置いて齋藤孝氏、ビートたけし氏は私の大好きな作家である。これは読まねば~! と鼻息荒く(だけど)ちびちび(味わいながら)読み出した。ああっしかし、9人ともページ数は同じなので、もっと話してよおっ、と前記ふたりの対談では思ってしまった。しかもどちらも藤原さんが多く喋っているので、なんか対談になってないよーっ(笑)ともちょっと思ったりして。特徴としては、9人とも藤原さんのいつもの怪気炎は絶好調で、言いたい放題。阿川弘之さんなんか「いいぞ、いいぞ(笑)」と面白がったりしている(笑)。 でも、9人通して読むと、やはりそれぞれ性格がしっかり出ていて、前記ふたりは聞き上手で受けるのが得意なのかな? と思わせた。 さて、「国家の品格」の大ベストセラーで一気に多くの人に知られるところとなった藤原さんだが、本業は数学者でお茶の水女子大学の教授である。お父上は新田次郎、お母上は藤原ていという作家の家に育っただけあって、藤原さんが口をすっぱくして言うのはとにかく教育の原点は読書だと言うこと。藤原さんの著作には必ず出てくる情緒力を養うのは読み書きそろばんであり、小学生からの英語やコンピューターの授業は言語道断、国語と少しの算数で充分、という発言は本著でも健在でゴオオオッ~とより熱を帯びているようである。 私は藤原さんの深い教養と検証された強い言い切り発言と、くすっと笑っちゃうような冗談をサラリと真顔で言ってしまうユーモアのセンスが大好きなんだけど、本著でも何度か笑ってしまった。 たとえば佐藤優氏との対談で「国家の品格」が出てすぐにロシアのインテリジェンス(諜報)に対訳されて政府関係者が読んでいるというくだりで、「そんな研究されてるんじゃ目障りだって消されるかも・・・」と藤原さんが言うと「その前に必ず警告がありますから、気づかぬ間に葬り去られることはまずありません。大丈夫です」と言う佐藤さんの言葉に「それ、大丈夫なのか(笑)」と応じるところは笑った。これは佐藤さんの発言も笑えるけど。この対談のラストの藤原さんの一言「エキストラベッドに気をつけながら」にもグククッ。すごいギャグ冴えてます(是非読んで笑ってください)。あとは佐藤愛子さんとの対談でご自身と木村拓哉を比べるところもプッ。 9人の中でも私がへえーっと面白かったのは、前記の佐藤優さんが暴露する外務省の裏側とか各国のインテリジェンス活動のアレコレ。また五木寛之さんとの歌謡曲談義には驚いた。ものすごく藤原さん歌謡曲に詳しいのだ。出てきた全ての曲を口ずさんて知っていた!! さすが、歌謡曲は情緒を養うと以前から言っていたけれど、こんな詳しいとは恐れ入った。私も出てきた曲を全部聴きたくなった。人は悲しい時には悲しい歌を聴きたくなって、悲しい歌こそ元気をくれるっていうことも新鮮だった。 9人中、唯一私が何者か知らなかった中西輝政さんという国際政治学者の方との対談も興味深かった。ここでも戦時中の暗号の話とか、アメリカとイギリスの違いの話が、ドイツやフランスの国民性の話まで派生して目から鱗だった。とにかく、単純に知識が増えました。藤原さんの著書はどれも知らないことを教えてくれてすごく勉強になるのだ。本著を読みながら、そういえば藤原さんの著書を読んで岡潔や関孝和のことを知り、彼らの本を読んだなあ~と思い出した。 本著を読むと、日本の今の教育はかなりヤバイ・・・と心配になる。それが現実にならないためにも、多くの人に本著を読んでもらいたい。そして、なんらかのできることをして欲しいと思う。とりあえず、大人も子供も本を読むことだ! じゃないとほんとうに日本て国はヤバイよお~!!
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一宮千桃(いちみや・せんとう)
映画評論家。講師。MC。情報誌映画担当を経て独立。フリーで文筆や講師活動を行う。好きな映画は「ピアノ・レッスン」。小学校の頃から観つづけてきた映画によって愛も恋も男も女も人生もオシャレも知ったという箱入り乙女(?)。趣味は海外旅行、読書、クラシック音楽鑑賞、美術展巡り。宝石収集。占い。古本屋巡り。 |
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- http://www.fe-mail.co.jp/trend/entertainmentflash/20100205.cfm
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