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今月の Pick up アーティスト
今、Fe-MAILが注目、話題、期待するアーティストをインタビュー。毎月紹介していきます。
恋、仕事、挫折、ファッション・・・、どんな素敵な話が飛び出すでしょうか。


This month Pick up ARTIST
#1 鄭義信(ちょん・うぃしん)
interview
profile
1987年劇団「新宿梁山泊」の旗揚げに参加。座付き作家として、数々の話題作を発表。93年には『ザ・寺山』にて岸田戯曲賞を受賞。「梁山泊」退団後は、劇団の戯曲や演出を手掛けるとともに、多くの映画脚本も執筆。崔洋一監督との共同脚本『月はどっちに出ている』では、日本アカデミー賞などあらゆる映画賞を総なめ。また最近手掛けた『OUT』もヒット。12月には、作・演出担当の『杏仁豆腐のココロ』を上演。新春には、NHKドラマ『またも辞めたか亭主殿』が控えている、今最も熱い作家だ。
人間のココロの動きを描いていきたいんです


 それぞれ家庭に問題を持つ主婦4人が、ある殺人事件を機に日常を逸脱していく映画『OUT』。その脚本を担当するなど、最近話題の日本映画では必ずその名を目にる作家・鄭義信さん。映画『愛を乞うひと』では、虐待経験を持つ女性の心情を描き、最新作『刑務所の中』では、塀の中で暮らす犯罪者の日常をコミカルに描写。また、12月には東京・名古屋・大阪で、別れることを決意した中年カップルのクリスマスの一夜を描いた『杏仁豆腐のココロ』を作・演出で行うなど、多数の作品を手掛けています。彼の作品で常に描かれる「愚かだけど、愛さずにいられない人々」に、彼はどんな想いを託しているのでしょうか。そのあたりと、今後の作品についてお伺いしてみました。

Fe-MAIL(以下F)-ヒット中の映画『OUT』(桐野夏生原作)をはじめ、『岸和田少年愚連隊』(中場利一原作)や『愛を乞うひと』(下田治美原作)など、鄭さんが脚本を担当した作品は、原作も有名なものが多いだけに書かれる時にかなり苦労されるんじゃないですか?

鄭(以下T)-原作がある本を映像化していく上で、文学表現と違う部分は多少は出てきますね。でも、原作者がその本で何を伝えたかったか、何を言いたかったかというスピリットの部分は絶対変えません。例えば『OUT』なら、4人の女性が殺人事件をきっかけに、不遇な人生からそれぞれの人生の突破口を見つけるという話だったから、原作とラストは違うものの、映画を見終わった人がスッキリとした気分になって、何かをつかんで映画館を出られるような作品にしたいと思ったんです。

F-その『OUT』はもちろん、最近は女性が主人公で、女性が共感できる作品を数多く手掛けられているように思います。

T-そうなんですよ。僕の中でオバサン度が強いんでしょうかね(笑)。でも、映画にしても芝居にしても、僕が書きたいのは「人間の心の動き」なんです。

F-12月に鄭さんが作・演出で上演される『杏仁豆腐のココロ』も、別れを前にした中年カップル(小夜子・達郎)が、これまでの二人の関係を振り返りながらクリスマスの一夜を過ごすという二人芝居。これも二人の心情が丁寧に描かれてますよね。

T-長年連れ添った二人の思い出は、決して楽しいことばっかりじゃなかった。事実、小夜子という女性は子供を死産するという経験があり、しかも長年一緒に暮らしながらも先の見えない二人の関係を終わらせようとしています。小夜子は心も体もボロボロに傷つきながら、それでもかすかな生きていくという光を感じている。観る人にもそのかすかな部分を感じてくれれば一番嬉しいですね。

F-すごく切なくて痛い物語ですね。

T-孤独な男と孤独な女が、相容れそうで相容れない物語なんです。人間の孤独は癒しようがないもんなんですけど、でもどこかで人間の深い孤独が一瞬手を結ぶ瞬間がある。それは幻想なのかもしれませんが、そんな部分を描いて伝えたいんです。別れていく男と女だけど、心のどこかで繋がっていて、違う場所で互いを思いやったり、うまく出会ったりするかもしれない。そんな針の穴のような希望を描きたかったんです。

F-2003年は、NHKで放映される正月時代劇『またも辞めたか亭主殿』(岸谷五郎主演)で、日本近代化に尽くした小栗上野介を描いた時代劇脚本に初挑戦。また、新春公開の映画『刑務所の中』の脚本では、塀の中で暮らす服役囚たちの日常をコミカルに描くなど、今後もかなりクセの強い人間たちが登場しますね。

T-『またも~』は歴史劇というよりは、大きな時代の流れに巻き込まれていく小栗上野介を通して、あの時代に生きた人間の心情を掘り下げました。また、妻・道子との夫婦の情愛も絡めたことで、夫婦善哉的なノリもアップしてます(笑)。

F-どの作品も笑ったり泣いたり人間味のある人物が登場しますね。

T-生まれが関西だから、吉本新喜劇的なものが好きで、そっちの方に寄ってしまうんですよ(笑)。関西人に組み込まれているDNAがそうするのかなぁ。人間の枝葉末節な部分である愚かさとか情けなさとかいう、どうしようもない部分が愛おしかったりするんですよ。昔はそう感じることが少なかったけれど、書くという仕事を始めてから、いろんな人間たちすべてが愛すべき存在なんだと感じるんです。

決して派手ではないが、骨太でいて繊細なお芝居。たった二人で演じられる、クリスマスの物語。

『杏仁豆腐のココロ』
2000年のクリスマスに名古屋で一夜のみ上演されたものの、再演の声が大きかったため、急遽今年12月に再演が決定。クリスマスの一日を舞台に、別れを前にしたカップルがこれまでの二人の関係を振り返り、可笑しくも悲しい、いじましくも切ない日々が露わになっていく二人芝居。
http://annin.zeicompany.co.jp/

■東京公演
日程:12月3日(火)~8日(日)
場所:ザ・スズナリ

■大阪公演
日程:12月17日(火)・18日(木)
場所:扇町ミュージアムスクエア

■名古屋公演
12月20日(金)
場所:長久手町文化の家 風のホール
料金:前売\3000 当日\3500

問い合わせ:
TEL: 03-3543-9595

取材/野上知子
TOMOKO NOGAMI


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