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今月の Pick up アーティスト
今、Fe-MAILが注目、話題、期待するアーティストをインタビュー。毎月紹介していきます。
恋、仕事、挫折、ファッション・・・、どんな素敵な話が飛び出すでしょうか。


This month Pick up ARTIST
#12 山下 久美子
interview
profile
1959年生まれ。80年『バスルームから愛をこめて』でデビュー。82年『赤道小町ドキッ』が大ヒットとなり、女性ボーカリストとしての草分け的存在に。ライブでの活動も精力的に行い、「総立ちの久美子」「ライブの女王」と称され、その熱いステージは絶大な支持を受ける。2000年には、デビュー20周年を迎え、気持ちも新たに数々の思い出の曲をセルフプロデュースしたベスト盤『THE HEARTS』を発売。その年の8月、HPにて突然の母親宣言。そして11月、双子を出産。02年には初めての手記『ある愛の詩』を幻冬舎より出版、同名タイトルのアルバムも発売。この9月にはミニアルバム三部作第一弾『歌う女 歌わない女』を発売。現在、初春発売予定の第二弾を制作中。
今、改めて、女として生まれて生きてるんだなと素直に思える


 山下久美子の最新アルバム『歌う女 歌わない女』が好調だ。作家のよしもとばななが、このアルバムのために書き下ろした短編小説「私だけが知ってること」をきっかけに、その小説から受けた世界観をベースにして、山下久美子自身が作詞。誠実で、それでいて少し華奢な、けれども生きるということにとても素直な女性を描いた作品に仕上がっている。カタカナなコトバに置き換えることなく、今の自分を確かめるように紡がれた作詞は、今を頑張るすべての女性に聞いてほしい作品だ。曲間に朗読を挟み、またかのバート・バカラックが書き下ろしたナンバーを盛り込むなど、ミニアルバムの定義がわからなくなる、実に豊富な内容。一人のアーティストとして、そして女性として、また母として、自らのコトバで元気を与える、山下久美子さんにインタビューしました。

Fe-MAIL(以下F)-先日行われた<スイートベイジル>でのライブ、スゴかったですね。熱くもあり、同時に、不思議なアットホームさを感じました。

山下久美子(以下Y)-実は、このあいだのライブには、よしもとばななさんも来てくださっていて、あのとき初めてお会いしたんです。なかなかお互い子育てに忙しい幸せママなので、時間が作れなかったんですけど、メールとか手紙を交換するくらいでね。わざわざ時間を作って来てくださって、そういうのもあって、スゴイ緊張感がありました。本当に、スゴイ、魔法にかかったような夜を過ごしたっていう感じでしたね。

F-ライブのMCでも幾度も「魔法」とおっしゃってましたね。

Y-そうですね。よく自分の中で20代のときに、(何かを飛び越えるために)ジャンプしていた時期があるんですけど、そういうことでもなく、ここに来て私の今の年代で、40代になってからジャンプってあるんじゃないかしら、と思ってたんですね。あの夜に、そういう胸の内から溢れるような、ジャンプが出来たっていう気がしましたね。実際、初めて(客席に)ダイブのようなものをしてしまったんですけど(笑)。

F-それは今回のアルバムでの大きなファクターとなっている、よしもとばななさんが来てくれたということも大きかったのかもしれないですね。よしもとさんの作品は、以前から読まれていたんですか?

Y-そうですね。気になるものは昔から、読んでいました。最近、彼女が学生の頃に書いた最初の作品「ムーンライト・シャドウ」っていうのがあって、それを買ってきて読んでみたんですが、それがとっても良かったんですよね。彼女のあとがきにも書かれてたんですけど、「これから書きたいことのすべてがここにあるだろう」と。本当によしもとさんの、内側にある自分というか、すごい深い部分にある彼女の才能というのがそこに書かれていて、すごく印象的な作品でした。もちろん『キッチン』とか、『ハネムーン』、『不倫と南米』や『ハゴロモ』なども好きです。このあいだは、『デッドエンドの思い出』を買おうと思ったんですけど、ばななさんからサイン入りで頂いて。

F-『デッドエンド~』、素敵でしたよねぇ。

Y-うん。素敵でしたね!

F-今回、ばななさんに小説を依頼して、そこで出来上がった『私だけが知ってること』という短編小説からインスパイアされたものが、アルバムの原案となっていると思うんですが、そういう作業というのは、これまであまりなかったのでは?

Y-そうですね。とてもいい刺激になっているというか、ばななさんから出てくるコトバの世界というものが改めてスゴイというふうに思いながらも、彼女の作品の中には、いわゆる女性としての共鳴感がすごくある。そういう意味では、詞を書いてて初めて面白いと思ったんです(笑)。やっぱりね、(作詞は)スゴイつらいものだっていうのがあったのが、そういうふうに思えたっていうのは、単純にスゴイことだと思う。

F-なるほど。自分のことを自分のコトバで書けばいいんだっていう・・・

Y-そうですね。コトバで綴られた世界っていうのに自分を投影しなくていいんだっていうね。今、現実にある自分から、ふと違う世界に移行しているっていうような、もうちょっと何だかその世界はほんわりと桃色になっている、嫌なことがないっていうような、何かそういった世界にいるんだっていう感覚が良かったと思いますね。

F-それは現実じゃない世界?

Y-そうですね。もちろん、今の生活もすごく楽しくて、例えば子供たちとの生活も楽しい。毎日大変ではあるけれど、とても楽しい。けれども、そこではなく、もっと女というところで生きている。他人としての自分がいるような感じになれて。そういうのを短い時間ではあるけれど、そこに一つ物語を作っていくというような感覚ですね。自分自身を見つめているような、違った自分を見つめているような、そして女として改めて自分を見ているような感じでしたね。

F-今こうして、ばななさんとやってみたり、作詞したり、ステージに立ったり、そしてママであったり。さまざまな役割があると思うんですが、改めて「難しい」と思うことってありますか?

Y-その質問が難しいなぁ(笑)。「難しい」というように捉えていないかなっていう・・・。出来ることと出来ないことというのに、私はあまり境界線を引いていないかなっていうかね。「今を」っていうふうに、今、出来ることをやる、っていうような感覚で生きているんだな、っていう感じですね。だから明日を楽しみにしながら今を大切に生きる、って今はそういう感じかな。「難しい」と捉えると、そこから一歩も動けなくなってしまうという現実があったりするから、ふとこうしたいと思うことを、それを面白いと思えるか、思えないか。そういう測り方ですね。だから子供たちと生活しながら音楽をやっているというのは、最高に幸せだなって思いますね。その何かが欠けてもダメっていうような、そういう感じ。

F-その中でも、子供さんの影響って特に大きいようですね。

Y-全部まるごと私の大事なものって思ったときに、今の私っていうのが改めて、女として生まれて生きてるんだなと素直に思える。だから、そういう意味で、今の私を知って欲しい、そういうのはありますね。やっぱり今の私じゃなきゃ普通に口に出来ないことというのがあったりするから、そういったことが作品とか歌として伝わったらいいなぁ、と願っています。


『歌う女 歌わない女』
東芝EMI
TOCT-25160
2381円



これまでのインタビュー
#62 石丸幹二 #61 加藤ローサ
#60 西島秀俊 #59 フットボールアワー
#58 林遣都 #57 能世あんな
#56 スネオヘアー #55 高良健吾
#54 玉木宏 #53 麻生久美子
#52 加瀬亮 #51 仲村トオル
#50 渡部豪太 #49 マイコ
#48 成宮寛貴 #47 市川実和子
#46 塚本高史 #45 新垣結衣
#44 遠藤雄弥 #43 鮎川誠
#42 タナダユキ #41 伊原剛志
#40 小出恵介 #39 西島秀俊
#38 Skoop On Somebody #37 山田洋次
#36 米倉涼子 #35 永作博美
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